【取材後記】鴻海を敵視するのは大きな間違い!現代ビジネス@講談社
【取材後記】鴻海を敵視するのは大きな間違い!
現代ビジネス@講談社
2016年4月19日に講談社のWebマガジン 現代ビジネスに記事が掲載されました。
台湾の知り合いや台湾駐在のJapanese ビジネスマンからは、好評いただけたのですが、
評判はいまいちでした。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48447
今年の4月に日本の代表的家電メーカー「シャープ」が台湾の新興企業の鴻海に買収されました。
その内容は、すでにご存じの方も多いと思います。
3月30日、日本経済史上初めて、大手家電メーカーが外資の傘下に入ることが決まった。創業104年を誇るシャープが、創業42年の台湾の鴻海グループに買収されたのだ。鴻海は、もともと日本企業の下請けから成り上がってきた企業。下克上と言っても良いかもしれない。
日本では、外国企業しかも台湾企業に日本のトップメーカーが買収された事をセンセーショナルに報道する姿勢が見えました。
台湾を本当に理解していない
特に鴻海の郭台銘が、外省人であるという点で彼を親中派、ひどいものになると「彼は中国人だ」と安易に解説する雰囲気には違和感を覚えました。
外省人というレッテルで、親中派と決めつけるのは、現代の台湾を知らない。今の台湾では、外省人・内省人という枠組みで、親日、親中、親米など全く決められない。世代、出身地、家庭、教育など環境によって複雑に形成された、いろいろな思想の台湾人がいるのが今の台湾だと感じています。
どこまでも日本人が正しくて、外国人が悪いという構図を取りたがるマスコミ
特に印象的だったのは、交渉の最終局面で偶発債務約3500億円の存在が発覚して買収金額が1000億円減額された点においても、「これが中国人のやり方だ。(彼は台湾人だが、(?笑!))」「最初から計画的だったんです。」と何の根拠を持ってそんな中傷をするのか、理解不能であった。それが愛国であるならば、それは大きな間違いだと思った。そんな時だけは、台湾の義援金(親日印象)はそっちのけだ。
偶発債務については、「偶発債務はどこにでもある」と正当性を強調する人。「鴻海側のデューデリジェンスがお粗末、能力不足」と台湾側を攻める人など、日本側、シャープ側の正当性を強調する発言もあった。
そこで、記事の2ページ目「あの郭台銘がよく耐えたものだ」(元原稿の表題「台湾人が苦笑する最近の日本」)で最近の日本の台湾人から見て、日本らしかなる「東芝の粉飾決算」や「エルピーダの倒産」を紹介した。
シャープの技術は流出するのか
今回の買収でシャープの技術は、中国に流出されると危惧する声も聞かれた。これも、私は杞憂だと思っている。
中国で働いている台湾人技術者の友人は、「自分たちの中国工場にも最高機密の技術情報や機器を持ち込まないのくらい、気をつけているのに、わざわざ大事な武器を中国や危ない国に持っていくわけがない。自分の首を絞める自殺行為だよ。」と日本人の杞憂を鼻で笑う。
ただ、今後 汎用性の高い技術は鴻海グループ内でいろいろな形で利用されていくことは間違いない。すでに、シャープの技術をどこに供与するかは、郭台銘の胸先三寸なのだ。問題は、シャープが更に有効な武器となる技術を開発し続けられるかだ。
もともと解体される予定だったシャープ?
日本産業革新機構の案をよく見ると液晶部門は分割して、ジャパンディスプレイに統合させることになっていたようだ。またいろいろな部門は関連の家電メーカーで切り売りして行く可能性すら垣間見える。人員削減も数千名規模で行う予定もほのめかしていた。しかも、債権放棄を銀行に要求するのも、政府系支援策が決まった際の常套手段だ。しかも、ジャパンディスプレイの社長は、前述の台湾でも汚名の高い倒産したエルピーダの元COOだ。
今となっては、後の祭りで検証すらできないが、もし鴻海がシャープを買収しなければ、シャープの液晶テレビは買えなくなっていたかもしれない。また、空気洗浄機や冷蔵庫も日本のライバル会社に吸収されて、シャープというブランドも無くなっていたかもしれない。
この点、鴻海はシャープを救った恩人なのではないだろうか?本来、この点のについて元原稿では解説したが、最終原稿で割愛した。(内容が刺激的すぎで、、、?)
今後の鴻海シャープはどうなるのだろうか。
この点については、記事の3ページ、4ページでも解説している。
キーワードは、EMSと自社商品の切り分けの成功、シャープブランドの活用、鴻海グループ製品の強化、B2BからB2Cへ、IOT、スマートハウス、3Cマーケット、などが連想される。
今後、白物家電&IOTで大きく世界戦略を展開していくことは間違いない。
少なくともシャープは今後鴻海グループの力で大きくマーケットを広げるチャンスを得たのは間違いない。
このチャンスを鴻海グループのシャープは今後のパフォーマンス次第で無条件に与えられることになる。私が、経済大臣だったらすぐに郭台銘氏を官邸にでも招待して、多額の日本への融資のお礼と今後の経済成長への支援のお願いをしたいくらいだ。(もちろん、危惧されている、技術の保護などに釘を差しつつ、彼を日本の仲間に引き入れるぐらいのことはしても、国家のためには必要ではないだろうか)
鴻海側の問題も少なくない。
ただし、鴻海側の問題も少なくない。最近、鴻海はシャープにリストラを要求し始めている。3000人とも7000人とも言われている。台湾人経営者は、リストラをしてはいけない理由はない。会社を守るためにはリストラの断行は経営者の権利でもある。もともと、鴻海本体のリストラや人材流動率は凄まじいものである。「使えないものは、去ってもらう。」この厳しい経営姿勢で、強い企業を作ってきた郭台銘だが、この手腕が日本の社会、シャープ社内で理解されるかは難しい。自分の正しい道を進めながら、説明責任、社内・世間・社会とのコミュニケーションを取っていかなければならないだろう。
黒船 鴻海のシャープ買収は日本のチェンジの大きなチャンス
今回の台湾進行企業の日本フラッグシップ企業の買収は大きな下克上だ。以前、Japan as No.1で日本式経営がもてはやされた時代があったが、残念ながらその日本式経営は今 大きな限界点に達しているのではないだろうか。終身雇用、年功序列、集団就職=就活などいろいろ見直す時期に来ている。鴻海のカリスマ経営者 郭台銘がシャープに行う経営改革は、今まで日本企業が自らでき得なかった大手術を行うモデルケースになる。
外国企業は毎年 単年度赤字ですぐにリストラを断行する。それが、良いか悪いかは別としても、鴻海が外国の常識を日本に持ち込んでくれるのではないだろうか。日本にとって良いか悪いかのはその後、再度検証が必要だとは思うが、大きな変化のきっかけになることを期待したい。
日本人は今後 台湾からやってきた黒船 鴻海を敵として駆逐しようとするのか、はたまた新しい時代のパートナーとして手を握るのか、我々の胸先三寸だ。
読者からの声:最後に読者から寄せられたお手紙の一部を紹介したい。
彼は商社マンで、シャープ製品担当を歴任し、
シャープとの合弁会社で副社長を歴任された方と
自己紹介されていた。
今回の鴻海によるシャープ買収で、シャープに同情
する風潮がありますが、とんでもない話です。
シャープが鴻海にだまされたとか、シャープがまるで
弱いものいじめにあったかのような記事も見たことが
ありますが、笑ってしまいました。
シャープという会社は今から考えても、とんでもなく
えげつない会社でした。
シャープが三星に株を売却したときは、「やっぱりね、
シャープならやりそうだ」という感想で、鴻海に
同情したことを覚えています。今回の買収金額の
1000億円減は、当たり前です。それまで危険な負債を
隠していたシャープのやり方は、昔と全然変わってないじゃん、
と思いました。よく郭さんは冷静に対処し、1000億円減を
勝ち取ったと思います。
ただ、シャープには立ち直ってほしいと思います。
技術力は確かにあります。が、社風というか、会社の
体質というか、一流企業には程遠いものがありました。
鴻海に買収され、その体質を一変させ、新たな
グローバル企業に生まれ変わってほしいと願っています。
いろいろご意見があると思いますが、私の個人的意見です。
ご意見、ご質問お待ちしております。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
富吉−桑(FUJI3)拝
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